ちょっと鬱入りそうなお話しなので注意。でも描写や知識は的確です。
「算学武士道」
小野寺公二著
久しぶりに和算が出てくる小説の紹介です。
こちらは、あらすじとしては幕末、仙台に和算を教えにきていた主人公はふとした事で、新政府軍に対抗するゲリラ組織に参加して、合意の上とはいえ、親友を手にかけてしまいます。
そして、それを悔いながらも死ねず、江戸に戻ったらそこに親友の妹が転がり込んでしまいます。主人公は後ろめたさから世話をするのですが、妹は主人公に恋心があってややこしい話に。
普通ならここで添い遂げて、見方も変わって頑張ろ〜みたいな話になるのですが、この本では主人公は最後まで後悔を手放さず、妹さんとは一緒になりません。
それどころか周りの人がみんな暗く、どん底の様に落ちていきます。
妹さんも何とか嫁ぎ先を見つけるも昔、無理矢理石綿工場で働かされたので、じん肺を発症して最後は殺されたりと、とにかく周りの人が悲惨な目にあうことが多いです。そんなことからも主人公は虚無的になり、そのまま鬱々としながら終わってました。
うーん、何というかかなり読むのが疲れますが、それでも文体が淡々としてるのでさくさくと読み進められます。
和算は主人公が算学の学者という設定なので、たくさん話題としては出てきますが、イベント的な展開は少なめ。主に算学道場の経営や当時の状況の紹介が多いです。その中では算額に関する話は多めで、後半では殺してしまった友人の弟から(逆恨みで)間違った算額を出されて、主人公が自分の流派から破門されるということに陥ります。
この辺りの描写は良いですね。
もうちょっと明るめの話にしたら受けたのにと思わせる小説でした。
(2019/2/15読了)