哀しみを糧にたゆまず歩けと言われるような感じ
「失われた町」
作者 三崎亜記
あらすじとしては、この国では町が突如として「失われ」そこに住んでた人たちも「失われ」る。しかもそれはとてつもない力でなかなかあがらえない。
そんな現象に立ち向かう人たちという連作短編集です。
文字にしてしまえば、それだけなんですが、物語はもっと深く、どの話も哀しみが覆っています。とはいえ、町について直接悲しめば、取り込まれて死んでしまうそうで、表立ってそのような表現はありません。
もちろん、大きな話はプロローグでもある通り、消滅を避ける手段が開発され、それを実行するのですが、最後まで結果は知らされず。
ただその過程にいて、頑張った人たちのお話ばかり。
もちろん、話の中にはこの作者の作品で出てくる、西域や居留地などの用語も出てきますし、この国が今の日本とは違うんだなとは感じさせますが、根本は日本での話に思えます。
何というのか、哀しいんだけど、それに溺れる事無く、それを糧にもする感じで生きていく・・・という感じでしょうか。
このお話の中で1番共感できたのは、町に意識を囚われた和宏さんでしょうか。
なんか私もこういう事してるような感じがします。
何だか久しぶりに本にシンクロしすぎて読んで哀しく本でした。
(2016/9/7読了)