レモンと本好きな人の記録

レモン味が大好きな人です。毎年期間限定のレモン味の商品のレビューをしていこうかなと思います。

この人の短編集は絶品。

「玉磨き」

三崎亜記

 

以前、「となり町戦争」を読んでからその世界観が好きでしたが、長編はちょっとダレるので、この人のは適当につまみ読み。

しばらくしてから、「コロヨシ!」を読んで、その世界観と競技に惚れ込んでしまいました。こういう香港映画っぽい設定は大好きなんですよね。で、そこから変わった設定の短編集「廃墟建築士」を読んで、やっぱりこの人の日常とちょっとだけ変わってる世界を描く力は一級品だなと。その意味では短編集のほうがアイディアがいい感じで読めていいんですよね。

さて、今回の本はそんなどこにでもある様な、やっぱりちょっとおかしいいろんな産業(仕事、事業)の人をインタビューした、ルポタージュの形態をとってます。

これが徹底していて、そのルポを書いた架空の人物の序文と後書き、それに参考文献までついてます。(もちろん全部フィクションです。)

取り上げられる職業も玉磨き、通勤観覧車、ガミ追いなどなど、なんとも不思議な存在です。

そして、これらの仕事や事業は消滅または忘れられようとしている物事の様で、どの話もも哀愁が漂いながらもなんとも言えない読後感があります。

個人的には、玉磨き(なんか玉をひたすら磨いて、その中にいる神様?みたいな存在を満足させる仕事)は面白かったです。

だってこの仕事?は何も生産しないんです。そのくせ満足するまではずっと磨き続けないといけないという。なんだか以前見た天目茶碗を再現しようとしている陶磁器家を思い出すぐらいストイックです。

でも本人はとっても軽い。そんなズレを考えていくと、私たちの仕事もなんにも生み出してないのかなと思ったり、でもなんかには役に立ってるんだろうな〜と考え込んじゃいました。

 

玉磨き (幻冬舎文庫)

玉磨き (幻冬舎文庫)