結構かためな感じだけど、意外と面白い(数学的に)。
「算額武芸帳」
金重明著
内容は1人の和算の研究者の生涯を描いた連作短篇集です。
最初に小さい頃からの話から始まり、伝記調に語られるので、えっと思いましたが、この話はこういうスタイルが良いのかも。話しは数学の面白さに目覚めた後、遊歴和算家(各地を回って和算を教える人)となり、和算勝負に勝ちながら、最後には一箇所に住んで行くというスタイル。話しはさきほどもいった通り淡々としてますが、和算の部分はしっかりと取材しているのか、詳細です。特に主人公の研究している、楕円曲線の形が円周を考えるのと対応がある下りはなんとなくフェルマーの最終定理の証明を思い起こさせるような面白さがあります。
で、最後にはその術を秘伝にしようとした支援者に怒って、帰り道に谷に落ちて暗転というところでおしまいです。最初に師匠の秘伝書を見たとき、あまりにも幼稚で、隠しといても誰かが見つけるということを知ってるから怒ったんですが、この辺りは数学や他の学問でも言えるような・・・。この流派主義が日本の和算の発展を妨げてたんだろうなと思わされます。
(2018/10/25読了)