江戸時代の庶民の姿と事情がよくわかります。
「銀杏堂手ならい」
寺子屋の先生のお話という事で、和算の話が出ないかな〜と思って購入。
内容は寺子屋の先生が捨て子を拾って育てながら筆子(生徒)とともに成長していく連作短編集です。
主人公は寺子屋の娘で子供ができずに出戻りとなった女性です。そして、すぐに自分は捨て子であり、実の親でもないという設定。
そんなわけで捨て子を見つけた時も自分に重ね合わせて、そして母親にも重ね合わせて話しが進んでいきます。
そして、このお話で良いのは江戸時代の庶民の姿。しかもちゃんと調査されてて、なんというかリアルな事情が色々と描き出されてます。
捨て子の制度や寺子屋の仕組み、長屋の実情など。それはなかなか綺麗ごとだけではいかないよねと言うぐらいです。でも、そんな事を紹介した後で主人公が奔走して少しはよくしていこうというところで各話が終わっていきます。
和算については第3話「飲んべえ師匠」に登場。数学のできる子供が家業の商店を継がないといけないけど、どうしても数学を続けたくて・・・という話で、ここでは「塵劫記」の遺題が紹介されます。確かに10-12才の子には難しいし、それを1問でも解けたら凄いと言えますね。
そして、最後に出てくる拾った捨て子の実の母親の旦那さん、自分の才能を鼻にかけて、甲府に飛ばされたの件を読んでて違うけど、同じく甲府に住んだことがある、和算家 関孝和を想像させました。
最後にこのお話で一番心に残った言葉は「寺子屋での手習いで、世間という海を泳ぐ時の板切れを持たせてあげたい。」ですね。
本当に勉強してるのとしてないのとでは世間の海を泳ぐの楽さが全然違いますよね。
自分の子にもこんな感じで何かを与えてやりたいと強く思いますね。
このお話の続きがあると嬉しいけど、綺麗に終わってるからないかもしれませんね。
(2017/12/19読了)