豊穣なファンタジーの世界観に楽しく没入できました。
「夜の写本師」
作者 乾石智子
こちらも図書館で借りて来ました。前々から人気はあったので、読んでみました。
ジャンルとしてはハイファンタジーになるのでしょうか、最初のページに名前と地図があり、読むのに時間がかかりそうな印象でした。
話としては生まれた時に右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠。三つの品をもって生まれてきた主人公が、育ての親を殺されて、その仇である魔法使いに復讐するという話です。
ストーリーとしてはよくある転生ものとその因縁に絡めとられて翻弄される人たちという構図です。
戸惑ったのは、古風な文体と魔術師の存在。文体は歴史書のような文体で、人物の心情が伝わりにくく冷たい印象でした。とはいえ話自体も後半までは復讐の話なので違和感はありません。もう一つは高位の魔法使いはとにかく長命になる事。出てくる魔法使いが軒並み数百歳レベルなので、100歳くらいでは若造だったり、転生の一つ前にいた人もいたりとちょっとややこしいです。
魔法は何だか大きな流れは無く、いろんな方式があるようです。
しかし、本作で主人公が会得する「夜の写本師」という、紙に文字を書いたりする事で、効果がある技法はかなり魔法の価値が下がってしまうような・・・。最後はいろんな人が使えてたし、闇を背負うことさえ副作用以外は万能ですね。
物語は前半は主人公の成長物語で、中盤に前世の因縁が語られ、後半は復讐劇となっています。
復讐相手の魔術師は確かに悪いやつなんだけど、なんでこうなったのかを探って最後には倒すのでは無く、相手の因縁も解きほぐして解放させるというところが和風な感じを受けました。
(そう見ると、写本師のスキルも神社のお札な感じなのかな)
ラストは輪廻ものでは、ありがちですが感動する展開。
シリーズの本もあるので続きも読んでみたいですね。
(2017/04/11読了)