科学史のストイックな文章は大好きです。
「梅雨将軍信長」
新田次郎著
最近、用があって算数関係の本を読んでます。これもその1つ。
新田次郎は言わずもがなですね。その作品のうち、科学啓蒙小説とでもいう様な江戸時代の科学を基にした小説です。そして、その科学について科学的な解説もあり、中々楽しいです。
あとがきによると、発表当時は評判が良くなく、すぐにこの系統は書かなくなったとのこと。とっても残念です。
この本は短編集で幾つかの作品が入ってますが、私の目当ては「算士秘伝」です。
こちらはその頃の和算(江戸時代の日本独自の数学)が派閥の悪弊によって発展が遅れたことを指摘した小説です。
出てくる人物はすべて架空ですが、似た名前の実在の人物はいるので思わずニヤリとしてしまいます。主人公は浪人ですが、天才的な数学の才能があり、それを当時の派閥同士が争って奪い合うという、いまの嫌なところが垣間見える作品です。また、この作品集全体にですが、ストイックな雰囲気が漂っていて、この作品も最後はアンハッピーエンドとなり、すっきりとはしません。
しかし、さすがに作家の筆力により、読むのは楽しいですし、そこまで悪い読後感ではないです。私はこういう作品も好きなのですが、皆さんはどうなんでしょうか?
とにかく、江戸時代の科学についてちょっとでも興味があれば、読んで損はないんじゃないかな。
(2016/7/14読了)